校舎からのお知らせ | 東進ハイスクール 柏校 大学受験の予備校・塾|千葉県 - Part 69

校舎からのお知らせ 

2023年 1月 14日 ★☆★【国語】大学入学共通テスト 解答速報

【解答速報】


【全体概観】

昨年から大問数は変化なし。設問数は2つ、マーク数は1つ増えた。第1問の評論。昨年に続き二つの文章を読ませる複数テクスト型の出題であった。第2問の小説は戦後初期の小説。問7は広告を掲載した説明的な資料を用いた新傾向の設問。第3問の古文は歌論『俊頼髄脳』。歌論の出題は2018年度センター試験『石上私淑言』以来5年ぶり。第4問の漢文は白居易の『白氏文集』からの出題であった。

大問数4題、各大問の配点50点。大問数は変化なし。設問数は2つ、マーク数は1つ増えた。

 第1問の評論では、ル・コルビュジエの建築における窓について異なる観点から論じた二種類の文章が【文章Ⅰ】【文章Ⅱ】という形式で出題された。この形式は昨年同様。【文章Ⅰ】、【文章Ⅱ】ともに引用文が含まれており、【文章Ⅱ】には写真が含まれていた。問1の漢字問題では昨年の傾向が踏襲された。問2、問3、問4は【文章Ⅰ】から、問5は【文章Ⅱ】からの出題(傍線部問題)、問6は【文章Ⅰ】と【文章Ⅱ】の関連を問う問題。生徒の発言の途中に空欄(X・Y・Z)が設けられ、空欄に入る発言を選ばせる形式であった。

 第2問の小説は、戦後派の梅崎春生「飢えの季節」からの出題で、引用箇所の字数は昨年より多く、設問数は2問増えた。問1~6は「私」の心情などを問うオーソドックスな設問で、まぎらわしいものも含まれている。問7は雑誌広告とそれについての説明文を掲載し、その資料による構想と考察から空欄補充の設問が用意されているが、広告という視覚的材料に目を奪われないように注意したい。

 第3問の古文の出典は歌論『俊頼髄脳』。本文は一つで、問4に『散木奇歌集』から和歌と詞書が引かれている。歌論の出題は2018年度センター試験『石上私淑言』以来。本文が一つで、設問に和歌の引用があるのは、2021年度第1日程や昨年度追試験と同じ。教師や生徒の発言に関する空欄補充問題の出題や、設問数が4つであることは昨年度本試験と同じ。語句と表現に関する問題、広い範囲に関する合致問題の出題は共通テストになって毎年度出題されているものである。

 第4問の漢文は著名な出典である『白氏文集』から白居易自身による、官吏登用試験の[予想問題]と[模擬答案]の組み合わせという珍しい形が出題された。語の意味、解釈、返り点の付け方と書き下し文の組み合わせ、内容説明など、例年の定番の出題に加え、比喩、空欄補入などが出題された。設問数7、マーク数9は昨年と同じであった。

難易度は国語全体としては、昨年並み。


【設問別分析】

【第1問】現代文(評論):柏木博『視覚の生命力―イメージの復権』、呉谷充利『ル・コルビュジエと近代絵画―二〇世紀モダニズムの道程』 やや難
問1の漢字問題は、昨年同様、傍線部の漢字と同じ漢字を含むものを選ぶ問題が3題、傍線部の漢字(「行」・「望」)と同じ意味で用いられている熟語を選ぶ問題が2題出題された。問2は病床の正岡子規にとっての、ガラス障子越しに外の景色を眺めることの意味を問う問題。選択肢①がやや紛らわしい。問3はガラス障子が「視覚装置」だといえる理由を問う問題。問4は「ル・コルビュジエの窓」の特徴と効果を問う問題。問5は壁がもたらす「風景の観照の空間的構造化」によって住宅がどのような空間になるのかを問う問題。傍線部の表現は難解だが、直後で「この動かぬ視点」と言い換えられていることに着目できれば正解は自ずと決まる。問6は【文章Ⅰ】【文章Ⅱ】を読んだ後の「話し合いの様子」が示され、そこに設けられた三つの空欄に入る適切な発言を選ばせる問題だった。(ⅱ)の正解はやや選びづらい。

【第2問】現代文(小説):梅崎春生「飢えの季節」 昨年並み
問1は主人公の心情を問う設問で、傍線部前後の内容から容易に判断できる。問2も傍線部の前の「思えば戦争中~慈善事業である筈がなかった」をふまえれば比較的簡単に解ける。問3は会話部分の心理を問う設問で微妙な選択肢が並んでいるが、老爺に対する憎しみではない点から、②か⑤にしぼられる。「自分へのいらだち」ともいえないことから⑤になる。問4は傍線部冒頭の「それを」が「おそろしい結末」を指しているが、その結末の内容は明らかにされていないため、①が最適となる。問5は①以外の選択肢の末尾がいずれも過剰な感情が示されている点で誤りとなる。問6は比較的容易に解ける。問7は【資料】とそれに基づく【構想メモ】に基づく【文章】の空欄補充問題。(ⅰ)は③と間違いやすいが、「焼けビル」自体は「検討の精神」と無関係。(ⅱ)は電球もビルも変化していないことから②だとわかる。

【第3問】古文:源俊頼『俊頼髄脳』『散木奇歌集』 やや易
問1は本年も解釈の問題。(ア)の「やうやう」(イ)の「ことごとし」は重要古語。(ウ)の「かへすがへす」は現代でも使う語。問2の語句や表現の問題は共通テストになって毎年度出題されている問題。本年は全ての選択肢が文法や敬語に関係するものだった。問3は1〜3段落に関する説明問題。広い範囲に関する合致問題も共通テストでは毎年度出題されている。⑤は3段落2行目に合致。問4の教師や生徒の発言に関する空欄補充問題は昨年度に続く出題。設問が問4までで、小問三つに分かれているのも昨年と同じ。(ⅰ)は前句の解釈で正解できる。(ⅱ)(ⅲ)は本文に書かれていないことや判断の根拠が不明確なものを消去して考える。

【第4問】漢文:白居易『白氏文集』 やや易
形式上は、官吏登用試験の[予想問題]とその[模擬答案]の組み合わせというものであったが、内容的には標準的な文章といえる。問1は「由(よし)無き」「以為(おもへらく)」「弁ず」の語の意味の問題。問2は解釈、問3は返り点の付け方と書き下し文の組み合わせ問題。問6、7の全体に関わる内容説明問題など、例年の傾向に加え、問4で比喩の問題、問5で空欄補充問題が出題された。


【新高3生へ】

みなさんが来年受験する大学入学共通テストでは、複数素材(文章・条文・グラフ・表・図・写真・会話など)から問題が出される可能性があります。複数の素材を読解して設問を解くわけですから、時間制約の厳しい試験になるかもしれません。今年度は、大学入学共通テスト3年目となりました。共通テスト4期生のみなさんが解くのは、今までとは異なる素材が組み合わされた問題の可能性もあります。素材の組み合わせが変われば、印象は違ったものになるかもしれません。試験本番でどのようなタイプの問題にも対応できるよう、できるだけ多くの問題演習に取り組みましょう。ただし手に入る「共通テスト型」の問題は試行調査の問題を含めてもあまり多くないかもしれません。東進で2カ月に1度実施される共通テスト型の模試などをうまく利用してください。いろいろなパターンに数多く触れることが大切なので、力がついてから模試を受験しようという考えではなく、可能な限り、受験するようにしましょう。

 そして、複数素材の問題に慣れることよりも、もっと重要なことがあります。それは、「国語学習の基本は読解力をつけること」であるということです。
どんな出題であっても、「書かれている内容を理解し、設問要求に合致する選択肢を選ぶ」という国語の読解の基本姿勢は変わりません。また、特に古文・漢文においては、身につけなければ読むことすらできない知識(古文単語・文法力、漢文重要漢字・句法力)があります。これらをきちんと身につけ、読解に生かせるようにし、演習を積み重ねていくことが重要となります。

 また、みなさんの先輩が受験していた、センター試験の問題は良質なものが多く、最良の演習素材です。基本的な読解力を身につけたら、センター試験の過去問で読解力を鍛えることも良い訓練になるでしょう。現代文2題・古文1題・漢文1題の4題を80分で解く練習に加えて、模擬試験で複数素材の問題への対応力を付けていけば、どんなタイプの出題となったとしても、あわてることはありません。大学入学共通テストまであと1年、次のアドバイスを参考にして、計画的に勉強を進めていきましょう。

■現代文
 第1問では「論理的な文章」「実用的な文章」、またはこれらの文章を組み合わせた複数素材で出題される見込みです。抽象度が高く、論理力思考力が問われたセンター試験の過去問も利用しながら読解力・論理的思考力を鍛え、共通テスト型問題の模擬試験を活用して複数素材の問題への対応力を高めましょう。また、漢字・語彙といった知識事項に自信が無い人はこれらを固めることが先決です。漢字力・語彙力は、単に漢字問題や語彙問題で点を取ることにとどまらず、読解力を根本から支えるものになります。早い段階で漢字と語句の問題集を1冊ずつ仕上げ、それを文章読解の中で活用していきましょう。

 また、速く読み解く力を身に付けるためには、設問に先に目を通して問われることを予め理解しておき、本文を読みつつ問題がきたら解くという読解法(「読みつつ解く」)を日頃からトレーニングしておくのも一つの方法です。また、複数素材がある場合、それらをどの程度読み込む必要があるかなど(例えば、長い法律の条文があるが、設問からすると一部のポイントだけを理解すればよいなど)の判断も重要になってきます。そして、本文を読み進めるときはただ目で文字を追うのではなく、キーワードや筆者の主張に線を引く、関連資料のポイントに印をつけておくなど手を動かすことで解答の根拠をすばやく見つけられるように学習を進めていきましょう。

 第2問は、「文学的な文章」からの出題となります。試行調査の第1回では、小説とそれを元にした小説の組み合わせの問題、第2回では、詩とエッセイの組み合わせ問題が出題され、一昨年の共通テストでは、小説と、その小説に関する批評文(設問中)を含んだ問題、昨年の共通テストでは小説中の語句を歳時記や関連する俳句などと結び付け、より深い理解へと誘導する問題が出題されました。このように、「文学的な文章」においても複数素材の組み合わせでの出題が想定されますが、文学的な文章でも、本文を「客観的」に読むという読解法は同じです。感情移入をして主観的に読んでしまうと得点は安定しませんから、本文を客観的かつ正確に読み、事実関係と登場人物の心情をとらえ、選択肢を要素ごとに分けて丁寧に吟味する読解法を身につけていきましょう。また語句問題は「辞書的な意味」を答える必要があります。日頃から辞書を引く習慣をつけて語彙力を強化するとともに、詩・短歌・俳句の出題に備えて「国語便覧」などを読む習慣をつけましょう。なお、第2問では、文学評論が出題される可能性もあります。その場合は、論理的な文章の読解の仕方をベースに解きましょう。

■古文・漢文
 大学入学共通テストの古文(第3問)・漢文(第4問)の問題は、現代文に比べると旧来のセンター試験との違いは少ないようです。問題演習にセンター試験の過去問を積極的に利用しましょう。古文や漢文は知識・基本事項の比重が大きく、身につけた知識が点数に結び付きやすい科目です。古文であれば、古典文法・古文単語・古典常識・敬語法を、漢文であれば、返り点・重要句法・漢字の用法や読み・重要語など、土台となる知識の定着度が大きなカギを握ります。これらをできるだけ早い時期にマスターすることが大切です。繰り返し確認をしながら、遅くとも夏休みが終わるまでに知識を定着させましょう。知識を身につけた後は、それを駆使してできるだけたくさんの問題を解き、解法の訓練を重ねること、そして、複数素材が問題文や設問文に入ってくる共通テスト型の問題演習を模試などを利用して数多く行うことが必要です。安定した土台の上に、正解を素早く判断できるように訓練を重ねることで、常に高得点をとる力を身に付けることができるようになります。

 夏以降は、解法と時間配分の訓練を繰り返して下さい。複数素材を扱った共通テスト対応型の模試は実戦演習に最適です。模試は、学習の進捗度・定着度を測定・認識するという意味で大変重要です。自分の学習進捗度合いが計画通りに進んでいるかを客観的に判断するためにも、「全国統一高校生テスト」を含めて隔月で年6回行われる「共通テスト本番レベル模試」を連続して受験していくことで、着実に実力をのばしていきましょう。

 

【新高2生へ】

大学入学共通テストの問題を解いてみた感想は、いかがでしたか?「国語はなんとかなる」と思っていた人は、ボリュームの多さに圧倒されたかもしれません。令和7年度の大学入学共通テストは国語の試験時間が10分延び、90分となります。また、近代以降の文章がいままでの2問から1問増えて3問110点に、古典が2問90点(古文・漢文各45点)となることが想定されています。

 大学入学共通テストは今まで以上に時間制約の厳しい試験になる可能性がありますが、ボリュームやイメージしていた国語の問題との違いに圧倒されたとしても、問題文を読み、内容を理解して設問に答えることには変わりがありません。国語力(読解力と語彙力)を鍛えつつ、与えられた課題を冷静に判断し、問題を解くために必要な情報を適切に読み取る力を養っていきましょう。読解力の定着にはある程度の時間が必要なので、他教科との学習バランスを考えてベースとなる国語力は高2生のうちに身につけましょう。

大学入学共通テストで高得点を取ることは志望校合格の必要条件です。次のアドバイスを参考にして、今から学力大幅アップに向けて、計画的に勉強をすすめていきましょう。


■現代文
 現代文で高得点をとるための大前提は、本文と設問文の正確な「読み」です。漢字や語句などの知識の習得は、高2の段階での大切な学習の一つです。単に表面的な知識を増やすのではなく、文章を読解していく中で、生きた形で語彙力をつけることを心がけてください。

 次に、速く読む訓練を積んでください。解答時間に余裕のない大学入学共通テストに対応するためには、一定以上の読解速度が必要です。これは一朝一夕には身につきません。早いうちから意識して速読する習慣をつけておいてください。また、「論理的な文章」と「文学的な文章」に得意不得意のある人は、安定した成績を取るためにも、早い時期に苦手な分野を集中して学習し、克服しておくようにしましょう。なお、大学入学共通テストは「実用的な文章」からも出題されますので、国語の勉強だけでなく、新聞やいろいろなジャンルの文章を読むことが結果的に試験対策にもつながります。積極的に読書の習慣を身につけましょう。

 また、模試や過去問などを解いた後は必ず復習する習慣をつけましょう。現代文を解きっぱなしにしていては実力はつきません。間違えた箇所の原因を知り、次に同じミスを繰り返さないようにしていくことで、次第に実力がアップしていきます。いずれにせよ、今まで現代文に対して正面から取り組んでいなかった人は、現代文に対する意識を改革してください。大学入試の現代文は、なんとなく解いていては高得点を取ることはできないません。きちんと対策を立てていく必要があるという認識を持つこと、そしてそのための基礎力をこの一年間で養成しましょう。

■古文・漢文
 まだまだ十分に時間はあるのですが、新高2生の諸君には、できるだけ早く「受験勉強としての古文・漢文」をスタートしてほしいと思います。学校の授業でやっているからOKではなく、「受験勉強としての古文・漢文」の意識を持つことが大切です。

 古文・漢文は、現代文に比べると、土台となる知識の比重が大きい科目です。古文であれば、用言の活用と助動詞・助詞を中心にした解釈のための古典文法、500語ほどの重要な古文単語、古典常識、敬語法などです。漢文であれば、返り点をたどりながら本文を読むスピードと書き下し文にできる訓読の力、使役・受身・反語・疑問・否定といった句法の力、漢字の読みや用法の知識などです。もちろん、これらの知識を蓄えることが最終目標ではなく、知識などを駆使して問題を解く力をつけることが最終的な目標です。知識の土台固めは反復して勉強する時間が必要ですので、早く始めた者が勝ちなのです。特に漢文は、「短期間で高得点が取れるようになる」科目ではありますが、それゆえ後回しにしておいて、結局最後まで点数が伸びないという受験生が少なからずいます。高2のうちに、早めに知識をマスターしてしまうつもりで始めましょう。問題演習はまだ焦る必要はありませんから、とにかくこの1年間は、受験勉強本格的始動のための土台固めと位置づけて下さい。

 大学入学共通テストに対する実戦的な対策としては、6月と10月に実施される「全国統一高校生テスト」があります。6月の「全国統一高校生テスト」では、令和7年の共通テストに対応した実用的文章を出題します。令和7年の共通テストの試作問題と同形式の問題が出された場合、実践的な訓練を通じて慣れていくことが大切になってきます。真剣に問題に取り組む模試の時間は、学力を伸ばす絶好の機会です。自分の現時点の力を知るためにも、学力を伸ばすためにも模擬試験は毎回欠かさず受験するようにしましょう。

2023年 1月 14日 ★☆★【倫理/政治・経済】大学入学共通テスト 解答速報

【解答速報】

【全体概観】

設問数、マーク数は昨年と同じ32。大問数も昨年と同じ7。

大問数は昨年同様、7題構成となった。第1~4問が「倫理」の第1~4問からそれぞれ抜粋、第5~7問が「政治・経済」の第2・3・4問からそれぞれ抜粋されている。昨年同様に会話文や資料文を読ませる設問が多く、読解に時間がかかる。リード文が置かれた出題はなく、ほぼすべての大問で会話文ベースで出題が行われた。
 第2問や第3問は、与えられた資料文の内容を十分に理解しないと答えられない問題が出るなど、解答に時間がかかる大問になっている。一方第6問や第7問は、資料などが多く出ているものの、オーソドックスな知識があれば極端に時間がかからない出題になっている。全体を通して見ると、問題のテーマは基本的なものが多いが、単に知識を使うだけでは解答を出すのは難しい出題だった。知識と知識を組み合わせて解答したり、論理的に思考して粘り強く解答にたどり着くことが求められている設問も存在しており、時間内に解答するためには、時間がかかる問題なのか、時間をかけなくてすむ問題なのかを見極める力が重要となっている。
 


【設問別分析】

【第1問】源流思想
生徒の会話文を基として、資料文や先生との会話から出題された。内容自体はオーソドックスなもので、小問4問中1問はセンター試験型の4択問題であった。問3・4は資料読解をベースとした出題だが、一定の知識が要求される設問であった。

【第2問】日本思想
3部に分割され、それぞれ生徒および先生との会話、および資料文という形がとられた。オーソドックスな4択問題は4問中2問であった。問4は三木清『読書と人生』を資料文に用いた出題が特徴的だが、この設問については求められているのは読解力であり、知識は必要とされない。それ以外の問題は繰り返し問われてきたものばかりである。

【第3問】西洋近現代思想
昨年と同様、リード文がない形式になっている。会話文などの空欄補充を求める設問が4問中3問であった。資料の読解問題が1問置かれていたが、他の設問は倫理分野の知識がないと正答にたどりつきにくい出題であった。

【第4問】青年期・現代社会分野
問3はリベラリズムと社会契約について思索したアメリカの哲学者ロールズの作品が資料文として使われており、読解力による対応が必要な斬新な素材であった。他の設問は青年期・現代社会分野の出題として頻出の事項であった。難易度が高い出題ではなかったが、会話文・資料文の量が多かったため、受験生は時間が圧迫された可能性が高い。

【第5問】「政治・経済」の学習
地方・産業構造・金融政策と国民経済の3側面から現在の日本が直面する問題について問うており、文字量が多く、読み取りのスピードが求められる出題となっている。その中で問3は地方公共団体、NPO法人、中小企業に関する知識が要求されるなど、時事的内容よりも基本的事項の理解が問われる内容であった。また問4は扱っている事項を知らなくても解答できるが、数的処理についての理解を問う内容となっている。

【第6問】法学部の模擬授業
昨年に続き、基本的な知識を問う問題の比率が高い。その中で問5は成年年齢引き下げに関連した少年法改正に関して出題された。身近なテーマなので、落ち着いて思考すれば正解にたどり着ける内容になっている。同様に問6も判例文と設問文を落ち着いて読んでいけば正解にたどり着ける。難解な写真・イラスト・グラフなどがなく、出題内容としては頻出の事項を押さえておくことで時間をかけずに解答できる。

【第7問】SDGsの意義と課題
問1~3がSDGsについて、経緯、条約、国際機関の仕組みに関する問題である。問4は各国の対外債務について、メモと表から正答を選ぶ問題。とりたてて専門知識がなくても正解にたどり着けるが、組み合わせで正答1つを選ぶため、落ち着いて読み取る必要がある。


【新高3生へ】

思考力重視の共通テスト
 3回目を迎えた「大学入学共通テスト」は、「思考力」「判断力」を測る「考えさせる問題」が中心となり、設問形式や構成、資料の使われ方などもセンター試験とは大きく変わりました。知識により解くタイプの設問も含まれていますが、この基本的傾向は変わっていません。
 その特徴として、第一に、各設問中に長・短の文章を設け、文章内容の把握力・要約力を問う設問や、関連性・因果関係を判断させる設問が見られます。従って、文章を多く読み、内容をいかに早く掴めるかが勝負となります。これは普段から文章を読みこなし、内容を理解することが求められているとも言えます。
 第二に、空欄問題において、空欄に当てはめるものが、語句だけでなく文章など多岐にわたっています。しかも複数の空欄すべてを適切に埋めることで正解になるので、断片的理解では得点できない仕組みになっています。
 以上の特徴を持つ「大学入学共通テスト」の対策としては、基本的概念を理解すると同時に、現在に至る歴史(主に戦後史)的つながりと、グローバル化の結果としての地理的広がりとを理解する必要があります。さらに、それらに加えて現代における諸課題の文化的・宗教的あるいは倫理的な側面の理解も欠かせません。つまり、現在の社会問題を広い視野で総合的に考える習慣を身につけることが必要です。また、文章を読んでその趣旨を把握する訓練をしなければなりません。

問題演習で実戦を重ねる
 自分では一応理解したつもりなのに、いざ問題を解く段階になると、選択肢の正誤がうまく判定できないという受験生の声を毎年聞きます。そうした受験生は過去問演習が不足しているはずです。「倫理、政治・経済」では、思想や制度の理解におけるありがちな誤解が中心になって誤文がつくられています。したがって、そうした「誤解」をつぶすために、実際の過去問にあたって、どこに誤りがあるから誤文なのかをひとつひとつ分析し、理解していく作業が大切になります。過去問の少ない共通テスト対策として、年間6回実施される東進の「共通テスト本番レベル模試」は、年間を通して共通テストと同一レベル・同一形式の問題演習を繰り返します。定期的な模試受験により、自らの学習到達度および思考力の深まりを測る物差しともなります。積極的に受験して、ライバルに差をつけてください。

2023年 1月 14日 ★☆★【政治・経済】大学入学共通テスト 解答速報

【解答速報】

【全体概観】

マーク数は30。図表を使用した問題は11問で、論理的思考力を問う姿勢が顕著。

第1問は知識を問う問題がやや多めの中、資料と知識を組み合わせて時間をかけて解答する問題が含まれていた。第2問は当てはまるものをすべて選ぶ問題の2題がともに解答に時間がかかる形式になっており、足踏みをさせられやすい。第3問は、少年法に関する知識を問う問題が難しいことを除き、知識を素直に問う問題が多い。第4問はそれぞれの問題の文章が長いが、問われていることは基本的である。全体を通して見ると、昨年と同様に問題で問われている内容は基本的ではあるが、単に知識を使うだけでは解答に至るのは難しく、知識と知識を組み合わせて解答したり、論理的に思考したりして粘り強く解答にたどり着くことが強く求められている。なお、センター試験で多く見られた文章型の4択問題が前年は2問であったのに対し、今年は6問になっており、この点では受験生はやや取り組みやすかったと思われる。


【設問別分析】

【第1問】地域の広報誌
 全体的に問題の文章が長く、解答に時間がかかる問題が多い。問2や問3はあまり学習の機会のない国の経済データが含まれているため、悩んだ受験生も少なくないと思われる。「高所得国」や「モノカルチャー経済」などのヒントとなる語句を見逃さないようにしたい。問4は近年世界で急速に進む脱炭素の流れに関する問題で、再生可能エネルギーについて問われた。

【第2問】「政治・経済」の学習
 問3から短時間で解答することが難しい問題が続いている。問3は「財産区」という語句があり、これを気にしすぎると先に進めなくなる。問5は「風に逆らう介入」という言葉に惑わされず、問題文をよく読んで解答したい。問6は選択肢に「国全体」があることで、受験生を困惑させたと思われる。問8は一見文章問題だが、増加率の比較が必要なため、即座には解答しにくい。

【第3問】法学部の模擬授業
 ロシアのウクライナ侵攻に着想を得たのか、全体的に安全保障に関する問題が多い。少年法に関する問6と、共通テストで典型的な長文資料の読み取り問題である問7以外は知識を素直に問う問題が多く、できるだけ素早く解答を終えたい大問である。

【第4問】SDGsの意義と課題
 SDGsや新興国の債務問題(アメリカの利上げにより新興国や発展途上国のドル建て債務の悪化が懸念された)、サプライチェーンなど、2022年の新聞に頻繁に登場した話題が多く見られる大問である。大問全体として長文が多く、しかも正誤の判断ポイントが細かい。また、3か国の債務負担の度合いが高まったかを問う問5や、問題文も選択肢も長文の問6は、解答に時間がかかる問題であった。


【新高3生へ】

「大学入学共通テスト」は、「思考力」や「判断力」を測る「考えさせる問題」が中心です。

その特徴として、第一に、各設問中に長・短の文章を設け、文章内容の把握力・要約力を問う設問や、関連性・因果関係を判断させる設問が見られます。従って、文章を多く読み、その内容をどれだけ早く掴めるかが勝負となります。これは普段から文章を読みこなし、早く内容を理解する国語力を測定しているとも言えます。
第二に、空欄問題において、空欄に当てはめるものが、語句だけでなく文章の場合もあるなど多岐にわたっています。しかも複数の空欄すべてを適切に埋めることで正解になるので、断片的・部分的理解では得点できない仕組みになっています。

以上の特徴を持つ「共通テスト」の対策としては、教科書を読むことに加えて、現在に至る歴史(主に戦後史)的つながりと、グローバル化の結果としての地理的広がりとを理解する必要があります。さらに、それらに加えて人間社会の現象(文化的・宗教的あるいは倫理的な側面)の理解も欠かせません。つまり、現在の社会問題を広い視野で総合的に考える習慣を身につけることが必要です。また、文章を読んでその趣旨を把握する訓練をしなければなりません。難度は高いですが、今このような力が求められているため「共通テスト」が生まれたと言えます。
 そのような力を身につけるためには、まず、類題や演習問題を多数経験するとともに、模擬試験などを受けて、実践力を養うことです。また、新聞などを読むことで時事ニュースにも関心を持ち、そのニュースが教科書のどの分野に関連する事項かを意識をすることも大切です。さらに、多数の資料を駆使した設問が必ず出るので、資料集やネット検索などで資料の見方・利用の仕方に慣れておくとよいでしょう。
 「共通テスト」は、設問が複雑に構成されていて、文章量や資料がたいへん多く、相当に訓練していないと解答に時間がかかる内容になっています。このため、中途半端で断片的な知識では太刀打ちできない恐れがあります。早く準備をスタートし、まずはこの傾向の問題に早く慣れることが大切です。東進の「共通テスト本番レベル模試」は2か月に一度、共通テスト本番と同じ形式、レベルで実施されます。定期的に受験して、自分の学習進度を確認しましょう。


【新高2生へ】

この記事を見ている皆さんは、『公共、政治・経済』を受験することを考えているのでしょう。『公共、政治・経済』は、「公共」と「政治・経済」の内容を出題範囲とします。「公共」は、知識を身に付けるだけではなく身に付けた知識を様々に活用することや、必要な情報を集めて読み取り、まとめ上げる力の養成を目標の一つとしています。皆さんも「公共」の授業で、様々な課題について考えたり、情報を集めて分析したりしたことがあるのではないでしょうか。
2021年に発表された「公共」のサンプル問題を見ると、試作段階であることを強調してはいますが、知識を活用して空欄に当てはまる語句または文章を選択する問題や、グラフから解答に必要な情報を読み取る問題が多くあります。
「政治・経済」は、概念や理論などを理解する力や、適切・効果的に資料をまとめる技能を身に付けることを目標の一つとしています。この科目は「公共」で軽く触れるだけだった概念や理論などをさらに深く学習します。

実際に『公共、政治・経済』がどのような形になるのかは現時点では不明瞭ですが、この2つの科目の特性を考えると、思考力や判断力を測る、考えさせる問題が中心となると思われます。考えさせる問題は構成が複雑なため、設問の意図や全体構成を把握するのに手間取りやすいのです。さらに、文章量も多いため、腰をすえて内容把握をしていかなければなりません。普段から長文を辛抱強く読みこなすことに慣れておきましょう。
それに加えて、普段から、ニュースや新聞などのメディアを通じて社会問題に関心を持つことが重要です。とくに新聞の記事を読みこなすことは「共通テスト」対策としては必須になります。また、用語集などをそばに置いて必要に応じて語句の理解に努めれば、自然に全体像が見えてきます。文章量が多く、変則的な問題構成に慣れるためには、模擬試験にトライしておきましょう。おのずと方策や必要事項が理解できるでしょう。また、早いうちにスタートすれば先が見えて心の安定にもなるでしょう。東進の「共通テスト本番レベル模試」は2か月に一度、共通テスト本番と同じ形式、レベルで実施されます。定期的に受験して、自分の学習進度を確認しましょう。

2023年 1月 14日 ★☆★【倫理】大学入学共通テスト 解答速報

【解答速報】


【全体概観】

出題形式・分量ともに昨年とほぼ同様。

大問は4題、マーク数は33で、昨年と同じであった。また昨年と同じく、従来存在した大問冒頭のリード文がなくなり、大問の導入はすべて会話文の形式であった。昨年はセンター試験型の短文4択正誤問題が15題あったが、今回は7題に減った。その他、正誤組合せ問題で8択の形式が復活した(2018年以降は4択または6択)。出題内容では、例年と比べて目新しいものは少なかったが、西田幾多郎の絶対矛盾的自己同一が初めて問われたほか、シェリングの文章が素材として初めて扱われ(知識は不要)、一度だけ問われたことのあるマッキンタイアの名を挙げつつ、その説明がドゥルーズ(初出題)になっている設問が出た。また倫理としては初めてモノカルチャー経済についての知識が問われた。全体に、会話文の読解が例年よりやや難しかった。

 


【設問別分析】

【第1問】源流思想
 生徒の会話文と資料をもとにした大問。これまでの共通テストの形式を踏襲し、出題内容もほぼオーソドックスなものばかりであった。ただ問4では、2017年センター試験を最後になくなっていた8択の正誤組合せ問題が出題された。わずかとはいえ正答率を引き下げる要因にはなるだろう。問われた内容としてもアートマンの正しい理解を必要としており、やや難しい。なお、問5のパウロの資料問題は2021年にほぼ同趣旨の問題があり、過去問を研究していれば容易に対処できた。

【第2問】日本思想
 昨年、一昨年と同様に3パートに分割され、古代・中世、近世、近現代について会話文をもとに設問が設けられた。問2はセンター試験型の単純な4択問題であったが、イザナミとイザナミの国生み、天つ神、「祀るとともに祀られる神」、スサノヲの誓約に関する突っ込んだ内容が問われたので、難しい。また問3は、これまでの共通テストでみられた資料をもとにした空欄補充だが、従来2箇所だった空欄が3箇所になっているので、難しくなっている。西田哲学はそもそも難しいものだが、今回初めて絶対矛盾的自己同一が出題され、受験生は戸惑ったと思われる。

【第3問】西洋近現代思想
 難しい資料読解問題がなく、その他の設問でも比較的平易な標準的な事項が多く問われた。ただ、出題頻度の高まっているレヴィナスについての問6は、選択肢のすべてでキーワード「顔」を用いており、判断の難しい問題となっていた。あとはパスカルについての問5でやや細かい知識が問われたほか、初めてシェリングの文章が素材として扱われた点が注目できるが、問題としては難しくなかった。

【第4問】青年期・現代社会分野
 例年、目新しい事項の出題が目立つ分野だが、今回は比較的保守的な出題であった。問4ではセンの「潜在能力」についての正確な理解が求められたほか、倫理として初めてモノカルチャー経済についての理解が問われたので、正答率は低かったであろう。また問8はマッキンタイアとドゥルーズの二人についての知識がないと正誤判断できない。


【新高3生へ】

公民科目を甘く見ないこと
公民科目の選択者には、社会科の中では世界史や日本史と比べて負担が小さいだろうからという消極的な理由で選択する人が少なくありません。たしかに学ばなければならない情報量だけをみれば、世界史や日本史よりも公民科目のほうが少ないです。とはいえ、世界史や日本史を選択する受験生のほとんどは高校1年生あたりから一通り学んだうえで受験対策をしているのに対し、公民科目の選択者の場合は、受験準備期間がきわめて短く、しかも独学の割合が多いという特徴もあります。つまり習得すべき情報量の少なさというメリットは、学習に当てられる時間の短さというデメリットでかなり相殺されてしまうのです。甘く見ていては痛い目にあうでしょう。

倫理は特殊な科目
他の社会科科目と比べて、また政治・経済や現代社会と比べても、倫理は特殊な科目です。というのも、人名や著作名といった断片的な知識だけで対処できる問題はきわめて少ないからです。そこで主に求められるのは、古今東西の思想家たちが長い時間をかけて取り組んできた思想的課題についての理解です。これは単語を暗記するような学習では、とうてい習得できない事柄です。思想家の名前を暗記できないなどとこぼしているようでは、倫理攻略の入り口にも立っていないと言わざるを得ません。それなりの時間をかけなければ身につくものではありません。まずは腰を据えて教科書をじっくりと読みましょう。それから用語集をこまめに引きながら、一つ一つの概念について深く理解してください。

問題演習が成否を分ける
ひと通りの学習が済んだら、あとは問題演習あるのみです。なかなか点が伸びないと訴える受験生に話を聞くと、ほとんどは圧倒的に問題演習が不足しています。倫理では、思想の理解においてありがちな誤解をしていないかという点を確認する形の誤文が多いです。したがって、そうした「誤解」をつぶすために、実際の過去問にあたって、誤文の誤文たるゆえんをひとつひとつ理解していく作業が大切になります。過去問の少ない共通テスト対策として、年間6回実施される「東進の共通テスト本番レベル模試」は、年間を通して共通テストと同一レベル・同一形式の問題演習を繰り返します。定期的な受験により、自らの学習到達度を測る物差しともなります。積極的に受験して、ライバルに差をつけてください。

【新高2生へ】

新課程・「公共、倫理」とは
 皆さんは、いよいよ始まる新課程での共通テストを受験する最初の学年ということになります。まったく過去問の存在しない状態での受験に不安感も多いかもしれません。新課程入試の「公共、倫理」は、これまでの「倫理」に加えて「公共」にも取り組まなければなりません。その内容は、教科書および2022年の試作問題から判断するに、おおむねこれまでの「現代社会」と同様のものとなりそうです。出題形式としては、これまでの旧課程「共通テスト」を踏襲するものになるでしょう。大きな方向性としては、知識よりは思考力重視というものになることでしょう。

学習の進め方
 「公共」では、広く社会のあり方について問われることになります。いまの段階では、細かい出題傾向や解法上のテクニックのようなことはあまり意識することなく、テレビの報道番組や新聞などにできるだけ気を配るようにするといいでしょう。ネット上でも政治・経済・社会について様々な情報や意見が飛び交っていますが、匿名掲示板サイトや動画サイトなどでは、事実無根のデマや無責任な放言も多いので、そうしたものに惑わされないようにすることも大切です。あとは学校教科書をよく読み、用語集などで主体的に調べていく姿勢も大切です。政治についても経済についても、正解のない問題について考える姿勢が求められますが、まずは事実をよく確認するという姿勢を何より大事にしたいところです。「倫理」では、古今東西の哲学や宗教などの様々な思想を扱うほか、青年期の問題や心理学、現代社会の課題と特質といった広範な主題について学びます。これらに共通するのは、私たちがどのような時代に生きており、どのように生きるべきなのかという大きなテーマです。したがって、倫理という科目は受験科目であると同時に、大人になる前に誰もが深く考えておくべきテーマについて検討する機会を与えてくれる科目でもあります。いまの段階では、各種の新書などの若者向け哲学入門のような本を読むことをおすすめします。

2023年 1月 14日 ★☆★【現代社会】大学入学共通テスト 解答速報

【解答速報】


【全体概観】

文字数は従来ほど多くなく、会話文も見られるなど、読み易い設問が多い。身近な具体的例示も多く、普段からの問題意識が大切である。

大問5、小問30は昨年と同じ。図表・グラフは昨年昨年より減少した。身近な例示も多く、基本的な問題が多いが、やや深く考えさせる問題も散見される。全体として、基本的知識を確実に身につけ、常識的判断も働かせれば解答できる問題が多かった。会話文やカード形式で、文の中にヒントや思考の方向が示されている場合があり、しっかりとポイントをつかむことも求められている。また、理論的事項はあまり多くはないが、国際経済の取り引きを比較生産費説で解釈する設問も出題された。教科書の理論的内容も含めた事項をしっかり身につけ理解していないと、正答が難しい問題もあった。 また、設問方式が多様であり、慣れておく必要がある。さらに、総合的判断力が必要で、単なる知識のみでは対処できない問いも多い。要求されている解答を早く察知する能力も必要とされるため、時間切れに終わる危険性がある。したがって、類題の演習を多く経験したものが有利な状況となったと言える。


【設問別分析】

【第1問】海外研修
2週間の海外研修という設定で、国際経済を中心として出題された。問1は海外取引を身近な例で理解させる出題であった。問2~4はオーソドックスな4択問題。問5は誘導に乗って思考すれば難しくはない。問6・7も平易な読解問題だが、やや硬く、長い文章を読みこなす必要がある。

【第2問】将来の目標
演劇を見て、将来の目標について考えるという場面設定から、青年期を中心に出題された。問1は青年期についてのオーソドックスな4択問題。問2は知識を必要としない資料読解問題だが、解答は平易。問3は企業に関する穴埋め問題だが、これも難しくない。問4は戦後日本経済の歴史的展開が問われた。問5は今回唯一の思想史問題であった。問6は財政に関するオーソドックスな4択問題である。問7はマズローに関して、単純な知識ではなく本質的理解が問われている。

【第3問】体験講義
大学の経済学部の体験講義という設定から、経済分野を中心に出題された。問1は名目GDPと実質GDPについて問われており、ややひねった問われ方なので、落ち着いて考えないと逆に見えてしまう。問2は込み入った導入だが、問題自体はオーソドックスな4択問題である。問3も国際経済に関する4択問題。問4はサービスの定義と具体例を問う珍しい問題。多くの受験生にとっては予想外の問題だっただろう。問5はプラットフォームという現代的な内容だが、問題自体は市場機構についての理解を問う基本問題である。問6は国家と経済について幅広く問うオーソドックスな4択問題である。

【第4問】裁判の傍聴
裁判の傍聴とその感想文という場面設定から、司法制度を中心に問われた。問1は司法制度についてのオーソドックスな4択問題。問2は刑罰についての理論を資料から判断する問題で、読解がやや難しい。問3は会話文の穴埋めであり、文脈を論理的に追わなければ正解できない問題となっている。問4~6は政治分野についてのオーソドックスな4択問題。問7も会話文の穴埋めで、論理的思考が求められる。

【第5問】子どもの貧困
「子どもの貧困」をテーマとした探究学習という設定から出題された。設問数は3問だが、それぞれの設問の文字数が多く、ボリュームのある出題となっている。問1はメモと二つの資料を読解し、数的処理を行う問題。問2は図を穴埋めする問題であり、難しくはないが、設問文が長文であり、当てはまる取組みをすべて選ぶという9択問題なので、見逃しがないか注意が必要である。問3は会話文の穴埋めであり、経済についての知識も必要とされる。8択問題なので、一つ一つしっかり吟味する必要がある。最後の大問に時間のかかる問題がそろっており、時間切れになった受験生もいただろう。


【新高3生へ】

 主体的に考え、社会参加の意識を持とう
 選挙権年齢が18歳以上になり、国の方向を決める選挙が皆さんにとっても身近なものになっています。一方、年齢構成がますます高齢者中心になっているため、若者の意思が政治に反映されにくくなっています。現代では情報化・グローバル化の進展で、海外のニュースがリアルタイムに飛び込んできます。それを理解するためには、それぞれの社会の政治・経済の制度と、その時代的背景や地理的要件の理解が必要になってきます。したがって、歴史・地理・倫理の総合的理解があって初めて現在の社会事象を把握できると言えます。

時事問題に注意し、問題意識をもつこと
 日常のニュースと教科書との関連性を絶えず注視し、総合的に社会事象を考え、問題意識を持つことが求められます。それには教科を学び・知ることが問題意識の入り口です。また、文章の読解に加えて様々な図表・統計などの現実の資料を手早く把握し、処理する能力を普段から意識的に養成する必要があります。国語力を基礎として、時事問題等に興味を持ち、自己の考えを養うことが肝心です。現代はマスメディアや情報機器などを通じて大量の情報が入手できる時代。これからの社会では、主体的に調べて判断することが求められるため、情報の処理能力が必須でもあります。

新形式の出題形式に慣れる必要がある
 まず、「大学入学共通テスト」になって導入された、新形式の出題形式の設問に慣れることから始めましょう。それには過去問(センター試験も含む)に数多く当たり、様々な設問形式を経験しておくことが必要です。そうすれば、本番でも展開を予測することができ、設問の意図を早く察知できて時間短縮を図ることができます。

長文や諸資料の内容から、設問の要求を読み取る
 教科書の基礎知識を前提に、長文や諸資料の内容を概観し、設問の要求する解答の方向をすばやく予測して、総合的に判断する訓練を普段から身につけるように心がけてください。東進の「共通テスト本番レベル模試」は2か月に一度、共通テスト本番と同じ形式、レベルで実施されます。定期的に受験して、問題形式や時間配分などの実践的訓練を通じて、自分の学習進度を確認しましょう。